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角川幻魔印税折半のまとめ

新規作成日:2019年10月14日

更新日:2019年10月14日

角川幻魔印税折半のまとめ

2019年8月30日の感想で毎月、幻魔大戦 Rebirthの感想を何か言うと書きましたが、9月27日の第63話 ハルマゲドンⅢで最新話は無料で配信されるようになりました。 とくに感想を言う必要もなくなったので、毎月、感想を言うのはやめにします。といっても12月の月末で最終回を迎えてしまいそうですが。

さて、私がこのサイトを開いた最大の目的。それは、私が知ってしまった"ハルマゲドン改題の謎の秘密"を世の中に知らしめることでした。まとめに入りたいと思います。

1982年に角川映画幻魔大戦の製作が絵コンテ段階に入るか入らないかの頃に、石森プロの某Kマネージャーが角川春樹サイドと平井和正サイドに抗議をします。

角川春樹サイドに抗議したのは、角川映画の幻魔大戦のシナリオ第1稿が平井和正の緑背の角川文庫版幻魔大戦ではなく、秋田書店サンデーコミックの少年マガジン版幻魔大戦に準拠したストーリーになっていたから。

平井和正サイドに抗議したのは、黙認していた少年マガジン版幻魔大戦のノベライズに関して、両者で合意を取らずに平井和正がノベライズしていたから。そして、もう一つは、角川映画の実質的な原作は少年マガジン版の幻魔大戦なのだから、角川映画化によってセールスの増加が見込まれる角川文庫版幻魔大戦の配分を受ける権利が石森章太郎にはあると考えたから。

最終的に、角川映画の原作と製作に石森章太郎がクレジットされ、平井和正は角川文庫版幻魔大戦全20巻分の印税の50%を石森章太郎に支払うということで、話が決着しました。

ぱっと聞くと某Kマネージャーが悪いように聞こえますが、少年マガジン版幻魔大戦のストーリーで脚本を書いておいて、石森章太郎を無視して製作を進めていたのは、角川春樹サイドの落ち度です。

微妙なのは平井和正サイドに対する抗議。リュウVol2の座談会で次のようなやりとりがありました。

永井豪:今度お書きになった『幻魔大戦』に対する思い入れでもいいし、過去の思い出でもいいし、これからのことでもいいんですが、なにかひと言ずつ語っていただきたいんです。

平井和正:くり返すことになっちゃうんですけど『幻魔大戦』ていうのは、ほんとうぼくの唯一の自信作ですね

永井豪:ライフワークになり得るという・・・?

平井和正:いままではぼくが書いた作品がぜんぶ『幻魔大戦』に収斂していくような気がしないでもない。

永井豪:やはり、ライフワークということですね。

平井和正:うーん・・・、そうですね。

永井豪:『悪霊の女王』のほうもはいらないことはないのでしょう。

平井和正:『幻魔大戦』のひとつのエピソードっていうふうに、このあいだふっと思ったんだけれども、たしかにそうなのかもしれない。 だから『幻魔大戦』は、さっき冗談ごとのようにいったけど、公開自由の原則というか、書きたい人にはだれにでも書かせるというふうにやるべきなのかもしれない。

永井豪:ラブクラフトの「クトゥルー神話」ですね。

平井和正:書きたい人がいるんだったら、ほんとに書いてもらおうか。

永井豪:あ、一番乗りさせてください(笑い)。

石森章太郎:つまり、でっかい蜂の巣状になっていて、渕がわからない世界であるという気がするんだよね。 だから、その一つ一つの隙間をおれたちがいま埋めていってるわけだよ。でも、おれたちだけじゃ埋めきれないところがあると思うんだよな。

永井豪:それはおもしろい。きょうの司会を引き受けた最高の収穫ですよ。

コラムの「幻魔大戦の成り立ち(2)」でも触れた通り、リュウ掲載版幻魔大戦と真幻魔大戦は石森章太郎、平井和正、それぞれが自由裁量で書くという合意のもとスタートしました。 徳間書店の出版物としては、その合意のもと、揉めずに独立して執筆されました。 しかし、平井和正は少年マガジン版幻魔大戦のノベライズを野性時代で始めました。これに関して、平井和正はSFアドベンチャー1982年3月号の読者インタビューP189で次のように答えています。

『幻魔大戦』も『真幻魔大戦』も、本来はひとつのものなんです。小説宇宙が劃然と分かれてはいないんですね。 ですからどちらが主でどちらが従とかいうことはありません。本当は同じタイトルにしたいところなんですが、 そうすると読者も出版社もわけがわからなくなっちゃう(笑)。 マンガ版の小説家ということで始めた『幻魔大戦』も、ここまでくると、はたしてどういう結末になることやら、自分でもわかりません。

これが平井和正の言い分であり、本音なのだと思います。しかし、某Kマネージャーの抗議に反論できませんでした。それに、おそらく、角川映画への配慮もあったのではないでしょうか。 平井和正は某Kマネージャーの要求を「5:5」という比率で許諾し、真幻魔大戦と角川文庫版幻魔大戦の執筆を1982年年末で凍結させて、「真幻魔大戦第三部」と「ハルマゲドンの少女」という外伝でしばらく幻魔大戦シリーズを走らせることになりました。

「角川文庫版幻魔大戦の1~3巻の印税を折半して、4巻以降はタイトルを変えればよかったのではないか?」。そんな意見は今だから言い切れる結果論(後出しジャンケンの意見)に過ぎません。 角川文庫版幻魔大戦は4巻以降も少年マガジン版のノベライズというスタンスは平井和正・出版社・ファンの共通認識でした。

黙認して放置していたのに、儲かるとわかってから分配を要求するからパッと聞くとイチャモンに聞こえますが、某Kマネージャーとしては当然の権利として主張したのだと思います。

私の結論としては、角川幻魔印税折半は、角川春樹サイド、平井和正サイド、石森章太郎サイド、三者ともに落ち度があったというものです。

  1. 角川春樹は少年マガジン版幻魔大戦の原作にクレジットされている「いずみ・あすか」が何者かを調べようとしなかった。
  2. 平井和正は角川文庫版幻魔大戦を角川書店で発表する際に、石森章太郎と話を付けておくのを忘れていた。
  3. 石森章太郎は角川文庫版幻魔大戦を黙認していたのに、映画化が決まったとたんに分配の権利を主張しだした。

振り返ってみると、石森章太郎が足を引っ張ってしまっているように見えるのが悲しいですが、 長編大河小説を書くにあたって、こういうトラブルを処理できなかった平井和正のビジネスの回し方にも問題があったように思います。 更に言うと、角川春樹サイドのりんたろうは、平井和正とも石森章太郎とも同じ方向を向いていませんでした。

第2次幻魔大戦シリーズは商業的には成功し、当時はベストセラーになりましたが、時の経過には耐えられませんでした。 当時は世紀末だとかノストラダムスの大予言だとかいう脅しをかけるような末法思想の雰囲気に流されて売れたという面も大いにあったと思います。 あと、角川文庫版幻魔大戦の4巻以降は読み返してみたいという作品にはなりませんでした。 1990年代後半や2000年代前半に大手書店に並んでいる犬神明とか月光魔術團を読んで、「やっぱ、平井和正はもう駄目だ。」と期待を裏切られたような、失望させられた"せつない"気持ちになったものです。

幻魔大戦とは全く関係ありませんが、18年ぶりに新作が書下ろしで刊行される小野不由美著《十二国記》の長編『白銀の墟 玄の月』。 続きを待っていた十二国記ファンの反響が凄まじく、『白銀の墟 玄の月』の予約受付が始まるなり、Amazonの本ランキングで1~4位を独占。 公式サイトで書影が公開されただけでアクセスが殺到し、新庁舎のサーバーが一時ダウンしたらしいです(「十二国記」(新潮社)の新刊、発売4日目で1・2巻計118万部に)。 ヒライストにとってはうらやましい。小野不由美のご主人の綾辻行人は幻魔大戦のファンで、幻魔大戦 Rebirthもお読みになっているらしいですが。




以上です。